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前回の「高速戦隊ターボレンジャー」と同じ形で感想をまとめます。連載の経緯もそちらを参照。
「地球戦隊ファイブマン」は、1990年に放送されたスーパー戦隊シリーズ第14作。
モチーフは「高校生で同級生」だった前作とは対極の「教師で兄弟」。
教師のヒーローといえば、先代に変身者が教師の「ウルトラマン80」もいるが、こちらは後年の作品で再び教師であった設定を拾うまでは、かなり中途半端な形で畳んでいて不評であった。対する本作は、5人が教師である部分は本編においてしっかり意味を成していて、特に最終回まで生きた設定だったという点で大きな違いがあり、その部分の好感度は非常に高かった。
特に語りたい評価点としては、まず次回予告がバラエティーに富んでいた部分を挙げたい。
最初の3話までナレーションが読み上げる従来のタイプだったものの、4話から敵幹部のイロモノ枠であるドンゴロスが担当するという謎采配に続き、中盤からはマスコットキャラの5くん人形が、終盤はファイブマンの5人のローテーションという謎の気合いの入りっぷりで1年間の次回予告を彩った。さながら次回予告の秀逸さに大絶賛される「装甲騎兵ボトムズ」のような、予告が本編と思える斬新さであり終始楽しませてくれた。偶然ではあったが、自分は放送当時の同期である「特警ウインスペクター」も本作と並行して視聴していたが、あちらは政宗
一成による次回予告のお手本のような構成であり、同年の東映ヒーロー特撮では真逆で差別分けがされた次回予告となっていたのが面白く感じた。
シナリオ面に関しては、第28話の初代艦長シュバリエの登場から劇的に面白くなったのは間違いない。
それまでの話の敵側の主要幹部であるガロア艦長は、外道でいたいのかギャグキャラでいたいのかの迷走具合が凄まじく、敵としての魅力が皆無だった。他にもキャラ面で言えば、マスコットキャラの5くん人形の脈絡のない登板も迷走を感じたし、星獣戦隊じゃない方でお馴染みの銀河戦隊ギンガマンも、初登場シナリオは面白いのだがゾーンの悪辣さに見合わない浮きっぷり。これらが合わさった結果、27話までは物語に一貫性がない「この戦隊は何を目指している作品なんだろう」という印象で、後述するデザイン面も合わさって「地味」という印象が強烈にあった。しかし、シュバリエの登場からゾーンという組織内の非道さが際立つようになったことで、話がかなり引き締まったような印象を受ける。演じる俳優もグリーンフラッシュなのだから、さながら戦隊OBによる作品に対する葛入れのようにも見えて良いテコ入れだったのではないだろうか。シュバリエは退場まで含めてとても好きなキャラだった。前作のヤミマルと言い、自分は途中から登場する物語を一変する敵組織の追加幹部を好きになりやすい傾向があるのかもしれない。大分後の作品だがシンケンジャーのアクマロやゴーバスターズのエスケイプなんかはかなりイマイチな存在に思えたんだけどね。
また、メンバーが教師ということもあってか物語の軸に子役の生徒が関わる部分が特徴的で、教え子が敵の罠にかかるという展開が多い。この何度も自分たちの教え子を守るファイブマンという構図こそが「守れよその愛で大切な人を 大切な人の未来を」というOPの歌詞そのものな部分に繋がっていて素晴らしい。そして、それらの展開は最終的に神にも等しき力を手に入れたラスボス・バルガイヤー唯一無二の攻略法へと繋がっていく。
バルガイヤーの弱点とは異星のとある花なのだが、その花は当初ファイブマンの両親が見つけ、それをファイブマンらが教え子にあげた後に大切に育てられていたことがラストに発覚。つまり、そんな世界に1つだけの花の力で、バルガイヤーを弱体化してギリギリ撃破することに成功するのだ。これはもうかーなーりアツい展開で感動的。教師であり教え子を守ったファイブマンたちだからこそ起こせた奇跡の大逆転劇であり、最高のカタルシスを感じる大団円であった。
これらに限らず、バルガイヤーの正体が発覚して瓦解していく銀帝国ゾーンの有様やファイブレッドと怒涛の死闘を繰り広げるシュバリエとの最終決戦などなど、最終3話分の展開は公式で「最終三部作」と括って壮大なラストバトルを展開する平成ウルトラマンだ...!と思うほどに目が離せない展開の数々で、これらは後続の作品に与えた影響が大きいという印象を受ける。
一方の批判点として、ファイブマンのデザイン面がもう史上最大のマイナス点。ファイブマンのデザインって、教師である変身者たちの担当科目がそれぞれの額のマークになっているのだが、言われなきゃ全然分からんくらい目立ってない。ファイブイエローの音符なんかはまだいいとしても、ファイブブラックの「語」ってなんやねん。「国語」か?何故後ろの「語」を選んだんだ…?
例えば、次回作以降で言うところの「鳥」「恐竜」「忍者」等のようなタイトル=モチーフと結び付くデザインって本シリーズではお約束のはずなんだが、本作の場合地球要素もファイブ要素もほとんどないんですよ。特に、「ファイブ」ロボなのに3体合体なのも果てしなく謎だった。これではマスクマンのグレートファイブの方がよっぽどファイブロボだろう。
このように、言葉は悪いがデザイン面は当時ネタ切れだったのだろうかと思えてしまうくらい地味の極み。
冷静に考えてあのデザインでファイブマンと言われてあの戦隊だよなって一発で浮かんでくる人って、シリーズファンか最後まで完走した人くらいだろう。あまりにもタイトルとデザインが乖離していて地味だったに尽きる。
また、前作でイマイチであった戦艦ロボは本作でもマックスマグマとして継続されたが、扱いでいうならば前作より遥かに改悪していて悪い意味で仰天してしまった。まず出番が初登場を除くと最終回だけで、たったの2回しかない。しかも2回目の最終決戦ではバルガイヤーに傷1つつけられず黒星という、あまりにも不名誉な戦績なのがいただけない。前述のバルガイヤー撃破までの展開は痛快ではあったが、マックスマグマの犠牲で成り立っている事実は物悲しく感じる。この扱いで定価1万円以上で当時は玩具が販売していたって正気とは思えない。次回作のジェットマンではロボットのあり方は本作とは大きく異なっているが、その中でも前作から2年続いた戦艦ロボが廃止は残念ながら当然の扱いとしか思えなかった。
それでも自分は本作のギミックで唯一好きなものがある。それは、終盤に実装されたファイブテクター。これがもうめちゃめちゃかっこいいし強かった。デザインも地味さを払拭した美しさだった。余談だけど昔遊んでいたTCG「レンジャーズストライク」でも良い防御札だった思い出が蘇る。通常形態から強化されたガジェットを装備すること自体はダイナブラックが初だったりするのだが、5人全員の共通の強化アーマーは本作が初。登板が3クール終盤だったこともあり登場回数はあまり多くはなかったのと、重要な局面では使わないこともあったりした部分が惜しくはあったのだが、これが与えた影響ってでかいんだなぁと知る。やっぱ強化形態はロマンがある。
本作は、第28話を境に作品への印象が激変する作品で、物語全体の盛り上がり方が、本作以前の作品より圧倒的な変化を感じた。シュバリエの登板から銀帝国ゾーンの印象が一変することから、ファイブテクターの導入・戦艦であったはずのバルガイヤーの正体・当初の首領たるメド-にまつわる真実・バルガイヤー唯一の攻略方法のこれまでのドラマの集大成…などと後半の物語の怒涛ぶりは衝撃の一言で、その魅力は作劇が高い評価を得ている次回作のジェットマンに決して引けを取らない。シリーズのシナリオ部分の傾向は本作から一変したように自分は感じたし、何より「教師で兄弟」としての物語をしっかり完遂出来た点は素晴らしかったと断言する。
これにて約1年半前から始まった「秘密戦隊ゴレンジャー」から始まるスーパー戦隊マラソンは完走!
先週完走した現行作の「爆上戦隊ブンブンジャー」含めついに全48作完走できた。
明日より始まる「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」も勿論視聴予定だ。
なお、すでに視聴済みであるジェットマン以降も見るかどうかについてなのだが…
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もう本作を完走してから1週間もせずに30話まで見てしまった(!?)
本作の終盤の怒涛ぶりがジェットマンに通ずるものがあると思い再視聴したくなってしまったのだが、本当にその通りと言わんばかりの面白さに感じる。スタッフは異なれど、ファイブマンあってこそのジェットマンの面白さなのではないか、というのが通して見た印象だ。以降の作品もどこまで見ていくかは未定。U-NEXTは第44作のキラメイジャーまで配信中なので、何年かかるか分からないがゆっくりここまで見続けていくのもアリかもしれない。
後、時間があれば記事にまとめていないゴレンジャー〜ライブマンまでのプチ感想まとめも書きたい。そしてジェットマン以降の再視聴含めて全戦隊分の感想まとめを作れれば理想なのだが、時間があればかな。
ここまでのスーパー戦隊番付
ゴレンジャー
>>(超えられない壁)>>ダイナマン=フラッシュマン
>バイオマン=チェンジマン=ライブマン=ファイブマン(New!)
>バトルフィーバー=デンジマン=ゴーグルV=マスクマン=ターボレンジャー
>>(超えられない壁)>>サンバルカン
>ジャッカー
最後に、どうしても本作で言いたいことを1つ言わせてほしい。
銀帝国ゾーン真の首領であったバルガイヤー、戦艦そのものがラスボスって部分はインパクトがあって素晴らしかったが、傀儡の首領たるメドーの元になった人物に対する異常なまでの執着心はストーカーの極みすぎて、化け物然とした見た目に対して誰よりも人間臭すぎワロタ