
今年の目標に漫画「ONE PIECE」を全巻読んで追いつく、がある。
元々今の家に引っ越す前に兄や友達から借りて本作の単行本の89巻まで読み、ジャンプ本誌もそこからちょっと先のビッグ・マムとの戦いが終わるところ(90巻途中の世界会議の手前)まで読んでいた。
つまり、自分から単行本を買ったことが一度もなかったので、引っ越してから読む機会が一切なくなりその先を全く読まなくなってしまったのだ。
また読み直そうと思ったきっかけは3つある。

1つは約2年前に映画館で「FILM RED」を見たこと。
この作品の監督が、本作のパイロットアニメ版や「スクライド」「コードギアス」をはじめとする自分好みの名作アニメをたくさん作り上げた谷口悟朗だったことと、ウタの歌唱担当に、「踊」をはじめとするホロメンの歌枠で何度もその楽曲を聴き原曲までハマっていたadoという名だたるクリエイターの参加に興味を持ち、
「ここ数年のワンピ知らんけど、まぁいつもの映画のノリなら楽しめるだろう(FILM Zまでは全作視聴していた) 」
で見に行ったところ、その良作ぶりに感動。
本作の映画作品で見てきたものだとそれまで「STRONG WORLD」が歴代で一番好きだったが、「FILM RED」はそれに並ぶ好感度で、相乗効果で原作の続きが気になった。余談だが、その後未視聴であった「FILM GOLD」と「STAMPEDE」も視聴したのだが、「FILM RED」が群を抜いて面白いという評価は変わらずだった。
2つは、「Dr.STONE」の記事にも登場した、Twitter(X)を使っていた時代の当時のフォロワーの熱い布教から。
その人の周りにおいて本作は、巻数の長さから敬遠されて自分のように読むのを途中で辞めた人かそもそも読む気にならないという人ばかりだったようで、語れる人が全くおらずもどかしさを感じていたようだ。「今のワンピース(ツイート当時は約1年くらい前)はアツい!昔読んでた人も頑張って読んでほしい!」と言っていたのが印象的で、読みたいという興味が生まれていた。

3つは、去年末にYoutubeで数日間かけて「ANYTIME ONE PIECE」を視聴し続けていたこと。
去年末は会社をクビになって自宅での空き時間が大量にあった。空き時間は基本的にパソコンでホロメンの配信を複窓(4〜5枠くらい)でつけっぱなしにしているのだが、ホロメンは平日の朝ほとんど配信していない。だが、パソコンから音と映像を常に出しておきたい自分がYoutubeのおすすめ欄を漁ってたまたま出てきたのが、24時間毎日アニメのワンピースを一挙配信している「ANYTIME ONE PIECE」だった。自分が見始めた頃はちょうどアラバスタ編の終盤(114話付近)で、そこからエニエスロビー編のラスト(310話付近)まで、睡眠時間中の配信を除いて夢中になってほぼ半分近い話を視聴して、そのままワンピ熱が再燃。
ここでついに原作の単行本を全て買って追いつこうという決心をした。

Amazonを調べると、長編ごとに単行本がまとめて購入できる「エピソードBOX」なる代物が販売されていることを知る。
現在発売されているエピソードBOXは10セット104巻まで。そこで、ツキイチペースでこれらを購入して全て読むことで10月までに104巻まで追いつき、今年の11月から年末にかけて105巻〜その時点の最新巻に合流しようという目標を定めることにした。早速先月にBOX1の12巻まで読み終えたのでまとめていく。
この記事は毎月末までに完走できていれば、ツキイチで年末まで連載していく予定だ。
なお、前述通り89巻までの内容は把握しているので、感想は改めて読み直したうえでの感想である。
以後の展開も知っているものであれば触れている部分はご承知おきを。
・旅立ち~オレンジの町のバギー戦
五十六皇殺しのヒグマは強すぎる。てか山賊ってそもそもなんなんだ感。海賊に会ったのがシャンクス達が初めてのような口振りだったり、フーシャ村に来たのも初めてってあの大陸ってそんなに広くて拠点にできるような場所はあるのか…?
その後も山賊という存在に特に触れられていないあたり、この第1話の時点で本編に今後活かす気は全くなかったような印象。
それはさておき、ルフィの海賊としての精神がシャンクスからハッキリと受け継がれているのは、ゾロやナミとの出会いの時点でよく出ていたんだなぁと改めて読み直して一番思った部分。
この時仲間にしたゾロもナミも性格に難あるキャラたちだが、ルフィの大らかな心で広く受け入れる様は、酒をかけられようが唾をはかれようが笑って許せるその心と一緒じゃないか…!という感動。
また、ルフィとオレンジの町のバギーの支配から飼い主のペットフードショップをずっと守り続けるシュシュのドラマには、本作そのものの良さが詰まっていると感じた。要するにルフィにとって一度縁が出来て顔を合わせたら、もうそれだけで友達であるという価値観は、主人公として分かりやすく好感触。
この時点でコビーやバギーといった後々の重要人物も集結しているので、東の海ってあまりにもすごい場所なんだよなとも。
・シロップ村のクロネコ海賊団戦
クロってこんなに姑息で小さい器の奴だったんだっけ!?という悪い意味での衝撃。
こんな回りくどいことしてまで金と平穏が欲しかったことまでは千歩譲ってまぁ理解できなくないこともないとしても、カヤが財産全て渡すと言っていたのに最後までカヤを殺すことにこだわっていたことは全然意味が分からなかった。平穏でいたいのかいたくないのか、どっちなんだい。それこそ劇中でルフィの言う通り「ウソップより器の小さい男」でしかなかった。ルフィとの戦闘もかなりあっさり終わっていて、その前に戦っていたモーガンやバギーの方がよっぽどボスとしての風格があっただろう。PSの「グランドバトル」の杓死は結構かっこよかったんだけどな。
なんといってもこの章の良い所は、「俺たちもう仲間だろ」の部分。ここまでゾロやナミは「お前は仲間な」と半ば無理やり誘うような形で加入させていたのに対し、ウソップは何も言わずにこの一件を乗り越えたことで仲間じゃんと言った所が実に感動的。ウソップは覇気習得前までは麦わら一味の中で弱キャラとしてのポジションが付きがちではあるんだけど、後の「ゴッドウソップ」として周りから恐れられるエピソードなんかからも分かるように、精神面や度胸だけ見ればルフィに引けを取らない「勇敢なる海の戦士」で間違いない部分が魅力的。自分は麦わら一味への加入の流れはこのウソップが一番好きだったりする。その前のウソップ海賊団解散の件も良いしなぁ。クロがあまりにもショボすぎるボスだったこと以外は文句なしの章。
・バラティエのクリーク海賊艦隊戦
ミホークなんかに出会ってしまったのが不幸の極みすぎたクリーク艦隊。とはいっても、能力者や覇気使いやおろか、航海士すらろくにいない50の艦隊なんぞ、所詮烏合の衆でしかなかったのだろう。本作における能力者や覇気ありきなパワーバランスを分かりやすく体現している例だと言える。しかもその様子だと、ログポースのシステムすら知らなくて滅茶苦茶な航海とかもしていたことは明白で、ゼフの持ってる海図で乗り切れるなんて思ってる辺りもグランドラインを完全に舐めてるとしか…w
ギンは「グランドラインでまた会おう」と言ってたけど、結局再会していないのもずっと気になっている。彼らのその後って扉絵辺りで描かれたりしていたんだっけ?クロはアニメだと海賊に戻ったような話があった記憶なんだが…あのまま海軍に捕まってしまって特にドラマもないまま今に至ると考えるのが自然だろうか。
ここで加入するサンジは、実は麦わら一味の中で主に戦闘面の描写やここぞという時に活躍する所で一番好きだったりするキャラだが、この時点ではそこまで過去について掘り下げていなかったんだなというのが大分後になって発覚するので、読み直すと受ける印象が大分違った。ゼフと出会うコックになる前の話がもっと悲惨で、悲しい過去においてサンジは一番に思えてくるキャラで間違いない。
・アーロンパークのアーロン一味戦
東の海編のクライマックスに相応しき章。この時点でのアーロン一味の実力及び組織の強大さや、作中の所業の悪辣さ具合はヴィランの中で群を抜いていたヤバさ(余計にクロやクリークのショボさが際立ちもしたが)。アーロンの懸賞金が2000万ベリーはどう考えても低いのだが、海軍と裏で手を引いていたのでこれがなければもうちょっと高かったような気がする。
アーロンが外道でありすぎたからこそ、ナミのここまでのルフィたちに対する自己中心的な行動原理にも一定の説得力を感じたし、時折ルフィたちに見せた優しさは育ての親ベルメールの精神を受け継いでいることもよく分かった。これを連載前から全て考えていたのであれば、ナミの一連の描き方は計算されたもののように見えてきてしょうがない。計算されたものと言えば、ここから40巻近い後の巻になって本編に登場するジンベエは、この章の時点で言及されている部分も注目ポイント。さらに、もっと後の魚人と人間の確執を描いた話では、アーロンがいかにしてここまでの巨悪にのし上がるようになってしまったのかも分かったりする。やはりストーリーの構成力が高すぎるよなぁこの漫画。
本章は、ナミの「助けて…」からの「当たり前だ!!!!!」の流れが、ベターではありながらも東の海編屈指の名シーンとして自分は高く評価している。はじめてナミが忌み嫌っていた海賊をルフィ達を通して肯定的に考えられるようになった瞬間で、ここまでのアーロンのワンサイドを反逆していく様は、後の章にも通じる「敵の圧倒的な実力を見せつけた後にルフィ達がねじ伏せて倒していく流れ」の走りとも思える。
気になる所としては、サンジVSクロオビ戦の不発に終わったクロオビの千枚瓦正拳は当たっていたらサンジに勝利出来たのか。ジンベエはこれの単純計算で5倍以上の火力と思われる五千枚瓦正拳を使っているが、この〇枚瓦正拳シリーズ技はこの時点だったらかなりの高火力技だったように思えるだけに、そのまま使わず敗北したのが残念でならない。羊肉ショットがかっこよくてどうでもよくなるんだけどね
もう1つ、前章からまたがって出てくるほどに出番のあったヨサクとジョニーってなんだったんだろうな。麦わら一味の仲間にする気は最初からなかったように見えるが、ここまでの活躍がヨサクがジンベエの話をして伏線貼ったことと、ゾロVSはっちゃん戦でゾロに刀を貸した以外に何もないしその後の物語にも全く関わらないしで、存在意義が謎のキャラだった。ジョジョ3部の家出少女みたい。
・ローグタウン~グランドラインへ
話自体は箸休めでかなり短いのだが、ルフィの「D」の名前についている伏線をしっかりと貼ったという意味では極めて重要なエピソードだろう。この話の前後のSBSコーナーでDの名前の質問を取り上げているのも確信犯ではないだろうか。扉絵連載を通じてバギーとアルビダが本編に復帰してる流れも絶妙すぎた。後、後の章では一生犬猿の仲として定評のあるゾロとサンジはここまでだとそこまで険悪に見えなかったのが地味に新しい発見。そもそも前の章で海に落ちたルフィをいの一番に助けに行こうと二人で必死になっていたり、アーロンをルフィに近づけまいと時間稼ぎをしていたりでめっちゃ息ぴったりなんだよなこの二人。どっからあそこまで露骨に険悪になったんだっけという部分に注目してその後も読まねば。
という感じでメモ書きの要領で感想まとめました!
改めて読み直しても、少年漫画の面白さのスターターセットといった面白さでありながら、しっかりと設定や物語が計算されて作られている辺りは先代の「ドラゴンボール」や「キン肉マン」や「北斗の拳」等の行き当たりばったりのライブ感で描かれていた名作たちと一線を画す魅力という感じで、技術力の高さを感じた。
ただ、改めて読み直して唯一自分に全く合わないなと思ったのは、作者の読者に対するノリだろうか。SBSコーナーは子供の頃は笑いながら読んでいたが、今読むと大分厳しいものを感じた。この部分は子供の心を忘れない尾田先生の精神が現れているともいえるかもしれない。基本的に作品の裏設定関連以外はスルーしたいと思うくらい中身もなければ面白さを感じない。自分はつまらない大人になってしまったなぁという気持ちにさせられるのであった。