はじめに
「キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!」は、タイトル通りのプリキュアシリーズの現行作「キミとアイドルプリキュア♪」の映画作品に当たる。映画シリーズだけの本数で見ると34本目に当たり、この数字だけを見ても歴史の長さを実感しますね。
シリーズファンからすれば毎年秋の恒例行事とも言えるプリキュア映画。
自分の場合このHPの「プロフィール」にも記載しているが、プリキュアシリーズはもはやライフワークそのもので、テレビシリーズも2004年放送開始の「ふたりはプリキュア」から約21年間一作たりとも欠かさずリアルタイムで見続けてきているシリーズだったりします。
映画についてもその歴史は長く、2005年の4月に一本目が公開。自分はシリーズ二本目の映画作品「ふたりはプリキュア Max Heart 2 雪空のともだち」から本作まで全て映画館で見に行っている。この映画は自分がプリキュアシリーズをずっと追いかけ続けようと思ったくらい思い入れの深い一本だったりするのだが、それについてだけで一本の記事がまとめられそうなので今後機会があれば語ってみたいところ。
そんな雪空のともだちは2005年12月公開なので、本作でちょうどプリキュア映画を映画館で見に行く習慣が20年を突破。その事実に勝手に感慨深く感じてしまいましたね。
下記の感想はネタバレ全開かつ視聴を前提とした文章になっておりますのでご了承ください。
映画の感想
まず、本作はアイドルという要素が題材のテレビシリーズと明確に異なるポイントがありました。
これは自分もアイカツやホロライブ等々アイドルという存在が自分にとって大きなものであるからこそ特に強く感じる部分なんですが、アイドルは特定個人の人に贔屓せず、皆にとって平等な存在なんですよね。
テレビシリーズでもモブキャラの一般人や敵組織のチョッキリ団に対しても等しくアイドルプリキュアとして接しております。
一方の本作では、アマスとテラと言う個人に対する救済をアイドルとして尽力する様が描写されていました。
これは映画ならではのあえての基本理念の否定とも言えますし、実際作劇には面白さや説得力が出ているので上手く描写されていて個人的にはグッときましたね。
先輩プリキュアたちの客演も前作映画同様クライマックスの助力として駆け付けるだけであり、本筋には全く関りがありません。
現行作より目立つような展開は全く好ましくなかったのでこの位置づけで大正解。まぁ、わんぷりとひろプリの面々がキミプリの面々に合流するまでで一本の映画出来るのでは、ってくらい壮大さを感じたりはしましたが
それでいてアマスへの説得には先輩たちのテーマや題材だったものとしっかり絡めた内容となっていて、ひろプリ勢はアイドル=プリキュアとしての在り方を、わんプリ勢は人とそれ以外の生きる者の命に対する価値観でそれぞれ説得を試みているのは過去作を見ていたファンからすれば納得の台詞運びになっていました。
一番の盛り上がり所であるライブシーンはかなり多かったです。
ここまで登場したテレビシリーズのキミプリの劇中歌は全て披露していたのではないだろうか。
変身シーンにも言えることだが、映画館のスクリーンではテレビと迫力が桁違いなのでそれだけで満足度が高い。映画館に毎年見に行きたくなる理由の1つだったりもするくらい。
それに加え、クライマックスでは前述の先輩プリキュアたちの主題歌をキミプリの面々が歌うというクロスオーバーシーンが必見。キミプリ勢は初対面なのにどこで先輩の歌を覚えたねんというツッコミはさておくとしても、この文化の始まりは遡るならばスプラッシュスターの映画で後期EDをプリキュアと妖精たちでカバーしたのが始まりだったりするが、この時からプリキュアのキャストが歌う主題歌は地味に自分の好きな要素の1つなので刺さった。
また、本作のEDもキミプリ面々が歌いつつ、先輩たちがコーラスを担当するOPのカバーと言う豪華仕様。
この影響で映画終わった後キミプリOPをヘビロテしてしまうくらい自分はハマってしまいました。
本作の物語の大筋は、1000年と言う時間の過去と未来を往来するタイムリープものになります。
この手の作品はSFでもベターな題材ではあるが難解さやとっつきにくさを出す題材としても定評があるなとも思っております。
したがって、例年に比べるとこの辺りの物語の取っつきにくさは否めなかったという感想が自分の中で第一に出てくる。
脚本担当が深夜アニメの有名作を担当している方であったりするので、その影響がちょっと出ているかなとも。
具体的にというかそもそもの話として、キュアアイドル達が1000年前に行った理由について明確な描写や理由が特にないんですよね。アマスの導きだったと考えるのがベターなんだとしても、別に過去に行くことなくても物語は成り立っていたんじゃないかってくらい理由が希薄化しておりました。
人間と妖精の命の時間差と言う部分が物語の肝である都合上、過去へのタイムリープが必要だったことは理解できるとしても。
尺の問題か細かい説明は特になかったのでもやもやする場面が多かった。そんなことは気にせずライブを楽しめと言うならばそれまでなのだが。
前作の映画をはじめ多くのプリキュアの映画は、物語の深い設定部分はそんなに見ている時に考えなくても、エンターテインメントとして素直に楽しめる部分が強く、そういった方向性の方が個人的には好みではある。
また、序盤に明らかにタイムリープに関する伏線が多数張られている事がよく分かる。所々に登場していたキュアアイドルの前に現れたテラの幻影が分かりやすい。つまり、2周することでより楽しめる映画だと終わった後に気づいたのだが、そのせいで初見にモヤモヤさせる部分が多いので一長一短な描き方だなぁとも。
ちなみに、時間軸の関係の設定が難解だっただけに、テレビシリーズでも解説に徹する蒼風ななの博識振りはより際立っていた。
本作の場合、ななの博識がなければ未来に戻れなかったんじゃないかと言うくらい大活躍だった。
設定面で言うならば、敵であるヤミクラゲがそもそも何者でどんな勢力なのかも全く分からないんだよね。
害虫のような存在で古から島を荒らしている存在なのかも…?くらいの予想は出来るのだが、そんくらい。物語もアマスの救済が最終目標なった都合上で本当にただの舞台装置以上の存在ではなかった部分もイマイチ。
ヤミクラゲ云々なしにアマスの闇落ちだけでも作劇は成り立っているように思えるし。
こんな感じで「過去に行かなくても物語は成り立ちそう」「ヤミクラゲいなくても物語成り立ちそう」と言うような物語の舞台設定周りは必要性に疑問符を感じるものが多々あるのが気になった。
総評
タイムリープを題材にした物語の難点をはじめ舞台設定周りには思う所は多々あったもののその、アイドルの概念の変化やライブ演出の素晴らしさはさすがと言いたくなる面白さでした!
ライブシーンだけでも映画館で見られて良かった。
毎年秋の映画は安定した面白さを提供してくれているという安心感を持っておりますが今年も変わらずの面白さでしたね。
来月は映画ラッシュで、ガルクラ・ゾンサガ・アイカツプリパラと3本立て。無職だからお金が…一般鑑賞料金2200円に値上がりしているのも本作見た時に初めて知って戦慄しました(震え声